アーセナルのメスト・エジル。相次ぐ批判によりドイツ代表引退を表明。
ドイツ代表躍進の象徴的存在をDFB会長やバイエルン会長がパフォーマンス低下を痛烈批判。
DFBが試作した政策を現会長が批判…
年齢的にカタール・ワールドカップ出場もありだったのだが…https://t.co/0RHquBR2Ix— 海外サッカー移籍情報 (@soccer_Infor) July 23, 2018
アーセナル所属のMFメスト・エジル。ドイツ代表からの引退を表明した。
ロシア・ワールドカップ前にトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と面会し記念撮影を行いSNSに掲載。
この行動が、トルコ大統領への支持につながる問題としてドイツ国内で大きな批判を受け大きな問題へと発展。
非常に大きな鬱憤が溜まっていると思われるエジルは、SNSに自身の思いを綴った。
まずは、トルコ大統領との記念撮影、SNSアップについて言及。
「 多くの人々と同じように、自分は1つ以上の国にルーツを持っている。自分はドイツで育ったけど、家族のバックグラウンドはトルコをルーツとするものだ。自分には2つのハートがある。1つはドイツ、1つはトルコだよ。子供の頃、母親からも自分のルーツへのリスペクトを常に持ち、それを絶対に忘れないように教わっていた。それは今も自分の価値観なんだ 」
「 自分にとって、エルドアン大統領との写真は政治にも選挙にも関係するものではない。家族の国に対するリスペクトだったんだ。自分の仕事はプロサッカー選手であり、政治家ではない。この面会は政治的な承認を示すものではないんだ。自分にとって、誰が大統領であるかは問題ではなかった。自分にとっては、それが大統領であることが重要だったんだ 」
次に思いの丈を吐露したのがメディアやスポンサーについてのこと。
「 自分は世界でも最もタフな3つのリーグでプレーしてきた。ブンデスリーガ、ラ・リーガ、そしてプレミアリーグだ。そしてそのキャリアを通じて、自分はメディアとの付き合い方を学んできた 」
「 ある特定のドイツ紙は、自分のバックグラウンドやエルドアン大統領との写真を持ち出して、右翼的なプロパガンダとして利用した。その写真と自分の名前を使った見出しで、ロシア・W杯での敗退を説明するのはなぜか?自分のパフォーマンスを批判したわけでも、チームのパフォーマンスを批判したわけでもなく、自分のトルコ系のルーツを批判しているんだ 」
そして最後が、ドイツサッカー連盟のラインハルト・グリンデル会長に対する痛烈な批判だ。
「 過去数カ月、最もフラストレーションが溜まっていたことは、DFBからの自分への扱いだ。特にラインハルト・グリンデル会長の扱いだね 」
「 彼は『 エジルが自分の行為についてもう一度説明すべきだ 』と言って、ロシアでの失敗の責任を自分に押し付けた。彼の無能さをかばうスケープゴートではいたくない。グリンデルや彼の支持者にとっては、自分たちが勝った時は僕はドイツ人だし、負ければ移民ということになる。自分はドイツで納税しているし、ドイツの学校に寄付もしたし、2014年にはドイツ代表でW杯を制した。にも関わらず、自分は今だに受け入れてもらえない。“ 異なる者 ”として扱われているんだ 」
「 DFBや他大勢から受けた扱いによって、自分はドイツ代表のユニフォームを着ることを望まなくなった。誇りと刺激とともにドイツのユニフォームを着ていたいけど、今はそうではない。この決断は非常に難しかった。チームメイト、コーチングスタッフ、そしてドイツの良い人々のために全てを捧げてきたからね。しかし、DFBの幹部が自分に対して行ってきた扱い、トルコ系のルーツへの経緯を欠いた扱いは我慢できない。自分はそのためにサッカーをしているわけではない。人種差別は絶対に受け入れてはならないものなんだ 」
エジルが発したコメントの一部を抜粋して掲載しているわけで、エジルの立場のみの情報だけで全てを判断するのは謝りがあるかもしれない。
エジルの軽率な行動、特にトルコ大統領選前に候補者であるエルドアン大統領( のちに当選 )と「 写真撮影 → SNS投稿 」の行動は、完全にアウトだろう。
如何にトルコへルーツを持つ存在であっても、世界的著名人であるエジルが大統領候補者との記念撮影をSNSへアップすれば、“ 支持者である ”と誤認させる可能性は十分にある。
エルドアン大統領が落選し、ドイツ代表がロシアである程度の結果を残しさえしていれば、ここまで大きな問題にはなってなかったと推察する。
が、結果は…
この点は、エジルの完全なる汚点だと個人的には思う。
問題はここからだ。
確かに、ワールドカップでのエジルのパフォーマンスは、目を覆いたくなるほど酷いものだった。
全盛期のエジルとは比べ物にならないほどパフォーマンスが悪く、ドイツ代表は10人で戦っているのではないか?と考えてしまうほどピッチ上での存在感はない。
確かにパフォーマンスは悪いが、その選手の起用を決断したのはヨアヒム・レーヴ監督だ。
レーヴ監督にも少なからず責任はある。ましてや、戦犯はエジルであると祭り上げることは論外。
この件に関しては、エジルが代表引退を表明したことで、ドイツ国内のメディアやスポンサー、国民は熟考する必要があるのではないかと考える。
そして、最後にドイツサッカー連盟の対応だ。
この件に関しては、全くもって連盟の言動に賛成することはできない。
そもそも、ドイツ代表が国際舞台で急速に結果を残すことができるようになった一つの要因は、国を挙げた抜本的な人材の発掘だったはず。
1990年に開催されたイタリア・ワールドカップ優勝を最後に、国際舞台で結果を残すことができなくなったドイツ代表は国策で抜本的な改革に着手。
細かな政策は把握していないのだが、若手選手の積極的な育成や二重国籍中心の選手を積極的にドイツ代表に登用などで結果を残してきた。
この立案の最終決定者は、おそらくドイツサッカー連盟会長だろう。国策とした対策したという報道もあったため、政治も多少関与しているかもしれない。
何れにしても、DFB主導でドイツサッカー界のテコ入れを行なっていたことは間違いないだろう。
この方法で24年ぶりのワールドカップ制覇を勝ち取った。
これだけの功績を試作したDFBの当時の会長、そして課題を引き継ぎしつつ代表強化へと邁進し続けてきた後の会長。
そして、グリンデル会長は、最も良いタイミングで会長職に就任し栄華を極めていたのかもしれない。
これは面白半分だが、代表がまさかのグループステージ敗退とい結果を受け取ったグリンデル会長は、自身の地位を如何にしても守るかのことに頭の中がいっぱいだったはずだ。
定説であれば、ナショナルチーム失態の責任は、現場の責任者( いわゆる監督 )と首脳陣の責任者( いわゆる会長 )トップ2人の首が前提とされている。
ここでグリンデル会長が画策したのが、ワールドカップ前からピッチ外での行動に批判を集めていたエジル1人に責任を取らせ、グリンデル氏は会長職に慰留するというプランだ。
要は、トカゲの尻尾切りといってもいいくらいかも。
結局、エジルがドイツとトルコにルーツを持つ選手であること、W杯でのパフォーマンスが思わしくなかったことを、トルコ大統領との写真撮影 → SNSアップ、これらをネタに徹底的にエジルを追い込んだということは、エジルのツイッターから見て十分に感じ取れる。
まず、私的に考えるは、過去の会長が苦肉の策で策定した指針を、代表の良い時間しか知らない会長が覆すようなことはするな!ということ。
過去の会長が苦肉の策で決定しチーム作りに導入したことが、現会長によって批判されるのは、組織として如何なものかと考える。
日本の一般企業であれば、『 方針の微調整( または逆 )は、他の仲間と会談の席を持つだろう 」
グリンデル会長が行おうとしたことは、まさしく人権差別。
管理人は、差別問題には比較的寛容な人物として売ってますが、“ エジル夏の乱 ”のことを考えると…
組織のトップに立つだけの人物ではないというのが正直なところだ。
だが、実にもったいない。
確かに負傷の影響などもあり、長期安定したパフォーマンスで試合出場することができていなかったエジル。
その選手を代表に招集し、ピッチでプレーさせたのも監督の決断だ。
誰が悪いか悪くないかの犯人探しをするつもりはないが、情報を流す際は、どこまで納得できるだけの裏どりを行なっているかは基本。
選手にインタビューしておけば、報道の仕方も違ってきただろうし…
最後に、エジルの言葉からは聞こえてこなかったが、最もエジルを痛烈に批判したのはバイエルン・ミュンヘンのウリ・へーネス会長その人だ。
「 騒動が終わったことを嬉しく思う。ここ数年、ひどいプレーをしてきた。最後の競り合いに買ったのは14年W杯前じゃないか。今はどこかに離れて、自分の悪かったパフォーマンスを写真の後ろに隠している 」
もう、正直意味がわかりません。
ブンデスリーガ最大のクラブを取り仕切るクラブの会長が残してきた発言です。
それらを考えれば…
エジルという当代きっての司令塔が代表引退一つで片付く問題ではないと考えさせられたのは、私一人ではないはずだ。
次世代の突き上げが感じられないドイツ代表。
アンダー世代からA代表に突き上げるくらいの選手候補が決して多いとは言えない現状。
ドイツ代表の絶対的司令塔が、代表引退を表明し、新たな人生をスタートさせることとなる。